2006年9月27日 (水)

名作と言われるだけのことはある 『ゲド戦記Ⅰ 影との戦い』

『ゲド戦記Ⅰ 影との戦い』を読了しました。

ゲド戦記 1 影との戦い ゲド戦記 1 影との戦い

著者:アーシュラ・K. ル・グウィン
販売元:岩波書店
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小学生の頃、一度手にしたことはあったものの、
その時は最後まで読み通すことなく放置してしまった
記憶のある本です。

小学生の頃、本好きを自称していたクセに、
これ程の名作を投げ出すとは情けないぞ! 過去の私。w

リベンジした理由は、まあ、先月、宮崎吾郎氏の映画を見たから……。
ベタな理由でスマン。

映画版を見てからしばらく後、これで『ゲド戦記』を
わかった気になってはいけない、
よし、本物の『ゲド戦記』に触れなければ!
という義務感にかられて、1巻を衝動的に購入した次第。

で、原作1巻を読み終わった感想ですが、やっぱり
映画とはテーマの深みも、格調の高さも、圧倒的に格が違う!

ゲドの成長を通して大人になることや、自分を知ることの意義、
世界との関わり方といったテーマが深く掘り下げられている点に感嘆しました。

少年が己と向き合って大人に成長する過程を描く装置として、
「影」という装置の使い方一つとっても、映画は小説の
上辺をなぞったにすぎなかったことがわかりました。

小学生の頃のの自分の読解力の無さを恥じるばかり……。
まあ、淡々とした展開が受け入れらなかったんだろうけど。

ところで、小説にヒスイというゲドのライバルが登場しますが、
私は最初、彼がその後、映画にも出てきた敵役クモになると勘違い。
調べてみたら見たらヒスイとクモは無関係らしい。
ヒスイとの因縁でもっとひっぱるものと思っていたのに、
あっさりしてるなー。

1巻がとても素晴らしかったので、2巻以降も近々読もうと思っています。
もっとも、次は京極夏彦氏の最新作『邪魅の雫』を読む予定なので、
かなりの間が空いてしまいそうですが。

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2006年8月17日 (木)

映像作品である意義は? 「ゲド戦記」

宮崎駿監督のご子息である宮崎吾郎氏の初監督作品
「ゲド戦記」を見てきました。

Gedosenki_1

某映画批評家がゴミ呼ばわりしていましたが、
そこまでひどい出来ではなかったとは思います。

吾郎氏が現在の社会に強い問題意識を持ち、
観客に伝えたい明確なメッセージがあって映画を
作っている点は好感
が持てました。

ただし、メッセージの伝え方には大いに問題があった
ように思います。

「ゲド戦記」では観客に伝えたいメッセージを全て
登場人物に直接喋らせてしまっている
のです。

登場人物の行動を通して、観客にテーマを考えさせ、
自然にメッセージに気づかせるようにすのではなく、
作り手の言いたいことを登場人物の口を借りてそのまま
伝えていることで、本作は非常に説教臭い印象の映画に
なってしまっています。

作り手の考え方をそのまま伝えてしまうことで
観客が自発的に映画のテーマについて考える機会が奪われており、
結果として深みのない作品になっていると言わざるをえません。

セリフに頼りすぎることによって、映像で観客の目を
楽しませることを失念してしまっているように思える
シーンが多く見受けられた
ことも残念
でした。

アクションシーンでは既存作品の影響は色濃く感じられるものの
それなりに高揚感のある手堅い演出が行われているのですが、
重要なセリフになると途端に絵が止まってしまうのは致命的

挿入歌「テルーの歌」が流れるシーンはその最たるもので、
楽曲が流れている間、ほぼ演出を放棄したかのように
静止画に近い風景映像を延々と流す見せ方は、
楽曲の良さを台無しにしているとしか思えません。

肝心な場面で視覚に訴えるという映像作品最大の武器を
効果的に使用していない本作に、私は
映像作品である意義を見出せませんでした。

他にも、主人公アレンの父殺しの罪に対する処理が行われないまま、
「アレンが人間として大きく成長しました。めでたしめでたし」で
締めくくられる釈然としないラストなど問題を感じる点は
多く見受けられます。

父以上に人間の負の面に正面から切り込んで描こうとする
吾郎氏の意欲は充分に感じられましたが、
氏にはまだ「ゲド戦記」という名作小説を扱うには
荷が重かった
かと思います。

この点は吾郎氏の責任というよりも、吾郎氏に短編映画での
修練の機会を与えず、話題作りのためにいきなり大作を任せた
鈴木敏夫プロデューサーの姿勢に問題がある
ように感じます。

新人監督の育成よりも話題性を重視する姿勢によって
「スタジオジブリ」ブランドの崩壊を招くことがないことを、
「スタジオジブリ」の一ファンとして願わずにはいられません。

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