« 久々の新作!
『金田一少年の事件簿 獄門塾殺人事件』上・下
| トップページ | 剛利さん、良かったね
『Dr.コトー診療所2006』第6話 »

2006年11月20日 (月)

英雄という茶番 『父親たちの星条旗』

クリント・イーストウッド監督が日米それぞれの視点から
太平洋戦争・硫黄島決戦を描く硫黄島二部作の一作目である
『父親たちの星条旗』を観てきました。

1_2

いきなり冒頭から混沌とした戦場にわけもわからず放り込まれたような
錯覚を覚える場面
によってクリント・イーストウッドの高い演出力に
打ちのめされます。

「衛生兵!」「衛生兵!」「衛生兵!」
あちこちで衛生兵を呼ぶ声がこだまする
地獄絵図にただただ圧倒されるばかり。

硫黄島上陸作戦時の様子は『プライベート・ライアン』や
『スターリングラード』で見た地獄と同じ様相。
これは監督が先行作品に演出的な影響を受けたというのも
当然あるのでしょうけど、第2次世界大戦当時、
世界中至る場所で同様の惨状が繰り広げられていたと
いうことでもあるのでしょう。

時に残酷で目を逸らしたくなる程のシーンを含むリアリズムに徹した
戦場の描写だけでも、本作は非常に戦争についての示唆に富んだ
質の高い戦争映画であることを実感
させられます。

2_2

ところが、本作の真に凄いところは戦場の描写ではありませんでした。

本作はむしろ戦場で英雄に祭り上げらられた男たちが本国で政治に
利用されるという虚飾に満ちた戦争の裏側に力点を置いた内容
になっています。

兵士を戦争継続のための客寄せパンダとしか考えていない
傲慢な政治家たちによって、戦場での勇気や犠牲がいとも簡単に
踏みにじられていく様を、あくまで冷静に、しかし静かな怒りを
たたえて表現していく演出がとても胸に迫ってきました

戦場を模したデザートに血のようなストロベリーソースが欠けられる様子や、
兵士たちがスタジアムの中央に作られた戦場の模型の上で星条旗を掲げる様を
再現させられる様子などが、戦場での惨状以上の残酷さ、無慈悲さを
超えるむごたらしさを感じさせる場面として目に映り、
鑑賞中は何とも表現しきれない感情が私の中で渦巻いていました

戦場での悲劇を描いた戦争映画は数多くあれど、英雄という
存在がいかに虚しい名声であるか、茶番劇であるかを
徹底的に指摘してのけた戦争映画は稀
ではないでしょうか。

英雄として祭り上げられた3人それぞれの苦悩と運命を通して
戦争とは何なのかを深く考えさせられる素晴らしい映画だと思います。

本作を見て、『硫黄島からの手紙』では、どのような切り口で描くのか、
さらに興味と期待も膨らみしました。

にほんブログ村 映画ブログへ

↑↓ランキング参加中。もう観た方もこれから観に行く方もポチっとお願いします。

|

« 久々の新作!
『金田一少年の事件簿 獄門塾殺人事件』上・下
| トップページ | 剛利さん、良かったね
『Dr.コトー診療所2006』第6話 »

コメント

はじめまして、ココログ検索できました。

本当におっしゃるとおりで、戦場の悲惨さを描いて、ヒューマニズムに訴えてくる映画は多いけれど、その裏にある政治の虚実までじっくり描いていましたね。

アメリカ人はどう思ってみたのか、気になりました

投稿: Nolly Chang | 2006年11月20日 (月) 00時57分

Nolly Changさん、はじめまして(^^)/
TB&コメントありがとうございます。

確かにアメリカ人の感想を聞いてみたいです。
どのような意見が返ってくるのでしょうね。

投稿: トミー | 2006年11月21日 (火) 00時37分

トミーさん、こんばんは!
いつもありがとう。

>虚飾に満ちた戦争の裏側に力点を置いた内容
になっています。

ですよね。
硫黄島のことは、ほとんど知識なしで観たのですが
こんな裏の出来事があったとは、唖然としてしまい、
怒りがこみあげてきましたよ・・・
国のタブーでもあって、よく映画にしました。

戦地へいったものしかわからない心のうち。
そして運命にあやつられる姿が辛かった。
重い作品でしたけど、深く感動しました。

『硫黄島からの手紙』も期待できますね!
号泣しそうな予感・・・。。

投稿: アイマック | 2006年11月21日 (火) 00時45分

アイマックさん、
TB&コメントありがとうございます。

ホント、国のタブーを良くぞ映画化したと思います。
私も深く感動しました。

『硫黄島からの手紙』も期待大ですね。

投稿: トミー | 2006年11月21日 (火) 00時55分

こんばんは~!!
TB&コメント、どうもありがとうございました!!

>戦場での悲劇を描いた戦争映画は数多くあれど、
>英雄という存在がいかに虚しい名声であるか、
>茶番劇であるかを徹底的に指摘してのけた
>戦争映画は稀ではないでしょうか。

全く同感!ですね~。
このあたりが「さすが、イーストウッド!」と言いましょうか、
圧倒的な演出力&映像力には、すっかり参りました!!
来年のオスカーにノミネート?ともっぱらの評判の
『硫黄島からの手紙』、大いに期待したいと思います!!

投稿: 伽羅 | 2006年11月22日 (水) 00時43分

伽羅さん、
TB&コメントありがとうございます。

『硫黄島からの手紙』もホント期待大ですね。
クリント・イーストウッド監督の下、
日本の実力ある俳優陣がどのような
演技を見せてくれるのかも、
とても楽しみですよ。

投稿: トミー | 2006年11月23日 (木) 23時55分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/102895/4247519

この記事へのトラックバック一覧です: 英雄という茶番 『父親たちの星条旗』:

» 映画「父親たちの星条旗」 [オレンジの太陽]
戦争映画は苦手だ。みていてつらいから。 我がままで横柄だと言われようと、私は今、 [続きを読む]

受信: 2006年11月20日 (月) 00時54分

» 父親たちの星条旗 [小部屋日記]
Flags of Our Fathers(2006/アメリカ) 【劇場公開】 第二次世界大戦末期、日米の激戦地となった硫黄島の戦いをアメリカ側、日本側とちがう視点で描く画期的なプロジェクト第一弾。 今回はアメリカ側から描いた作品。 原作はジェームズ・ブラッドリーとロン・パワーズ。 主人公の一人でもあるジョン“ドク”・ブラッドリー衛生兵はブラッドリー氏の父親です。 反戦映画と一言では片付けられない作品だと思いますね。とてもよかっ�... [続きを読む]

受信: 2006年11月21日 (火) 00時34分

» 父親たちの星条旗 [映画とはずがたり]
太平洋戦争の有名な写真、 「硫黄島・摺鉢山に星条旗を立てた6人の兵士」 の軌跡を紡ぎだした、 クリント・イーストウッド監督 渾身の戦争映画!! STORY:砲弾に襲われた山の頂に星条旗を掲げる 6人のアメリカ兵―。 1945年2月23日、太平洋戦争末期の激戦の真っ....... [続きを読む]

受信: 2006年11月21日 (火) 23時10分

» 父親たちの星条旗 [悩み事解決コラム]
 {amazon}  「父親たちの星条旗」都内近辺では上映終了となってい たが、どうにか銀座シネパトスまで行って観た。ちなみに 「硫黄島からの手紙」は実家武蔵村山のダイヤモンドシティ ・ミューの3Fにあるワーナー・マイカル・シネマズ武蔵野 にて鑑... [続きを読む]

受信: 2007年1月 9日 (火) 21時58分

« 久々の新作!
『金田一少年の事件簿 獄門塾殺人事件』上・下
| トップページ | 剛利さん、良かったね
『Dr.コトー診療所2006』第6話 »