« 戦争を語りつぐ意義 「男たちの大和/YAMATO」 | トップページ | 名探偵v.s.名犯人 「容疑者Xの献身」 »

2006年8月17日 (木)

映像作品である意義は? 「ゲド戦記」

宮崎駿監督のご子息である宮崎吾郎氏の初監督作品
「ゲド戦記」を見てきました。

Gedosenki_1

某映画批評家がゴミ呼ばわりしていましたが、
そこまでひどい出来ではなかったとは思います。

吾郎氏が現在の社会に強い問題意識を持ち、
観客に伝えたい明確なメッセージがあって映画を
作っている点は好感
が持てました。

ただし、メッセージの伝え方には大いに問題があった
ように思います。

「ゲド戦記」では観客に伝えたいメッセージを全て
登場人物に直接喋らせてしまっている
のです。

登場人物の行動を通して、観客にテーマを考えさせ、
自然にメッセージに気づかせるようにすのではなく、
作り手の言いたいことを登場人物の口を借りてそのまま
伝えていることで、本作は非常に説教臭い印象の映画に
なってしまっています。

作り手の考え方をそのまま伝えてしまうことで
観客が自発的に映画のテーマについて考える機会が奪われており、
結果として深みのない作品になっていると言わざるをえません。

セリフに頼りすぎることによって、映像で観客の目を
楽しませることを失念してしまっているように思える
シーンが多く見受けられた
ことも残念
でした。

アクションシーンでは既存作品の影響は色濃く感じられるものの
それなりに高揚感のある手堅い演出が行われているのですが、
重要なセリフになると途端に絵が止まってしまうのは致命的

挿入歌「テルーの歌」が流れるシーンはその最たるもので、
楽曲が流れている間、ほぼ演出を放棄したかのように
静止画に近い風景映像を延々と流す見せ方は、
楽曲の良さを台無しにしているとしか思えません。

肝心な場面で視覚に訴えるという映像作品最大の武器を
効果的に使用していない本作に、私は
映像作品である意義を見出せませんでした。

他にも、主人公アレンの父殺しの罪に対する処理が行われないまま、
「アレンが人間として大きく成長しました。めでたしめでたし」で
締めくくられる釈然としないラストなど問題を感じる点は
多く見受けられます。

父以上に人間の負の面に正面から切り込んで描こうとする
吾郎氏の意欲は充分に感じられましたが、
氏にはまだ「ゲド戦記」という名作小説を扱うには
荷が重かった
かと思います。

この点は吾郎氏の責任というよりも、吾郎氏に短編映画での
修練の機会を与えず、話題作りのためにいきなり大作を任せた
鈴木敏夫プロデューサーの姿勢に問題がある
ように感じます。

新人監督の育成よりも話題性を重視する姿勢によって
「スタジオジブリ」ブランドの崩壊を招くことがないことを、
「スタジオジブリ」の一ファンとして願わずにはいられません。

↓ランキングに参加しています。クリックしていただければ幸いです。

にほんブログ村 映画ブログへ

|

« 戦争を語りつぐ意義 「男たちの大和/YAMATO」 | トップページ | 名探偵v.s.名犯人 「容疑者Xの献身」 »

コメント

こんばんわ。
TB&コメントありがとうございます。
私も同意見です。
言わずもがな、がなかったですよね。
最初から荷が重かったから仕方がない、とも思いますが
普通の監督ならそんな甘いこと云ってられないというところもあるかと・・。
でも私もジブリファンなので温かい目で見ていきたいとも思う、、
複雑(;´∀`)

投稿: PINOKIO | 2006年8月18日 (金) 00時07分

こんばんは。私もこの感想に同感です。
挿入歌のシーンは、もっと見せ方があっただろうと思いました。
大切な場面だけに、すごく残念です。
冒頭、父親を指すシーンも必要あったのかなと感じますね。
結局ほったらかしで・・・
ですが、決して駄作ではないと思います。やはり底辺にある
テーマやメッセージは心に響くものでしたし。
今後に期待、ですね。

投稿: のりっぺ | 2006年8月19日 (土) 20時52分

>PINOKIOさん、
 TB&コメント返しありがとうございます。

 確かに新人監督だからといって甘えていられる
 世界ではないですよね。
 吾郎氏にはこれからもっと修行を積んでもらって
 次でリベンジしてもらいたいですね。

>のりっぺさん、
 コメントありがとうございます。
 
 父を刺して逃げるシーンは、何らかの解決を
 与えないといけないですよね。やはり。
 ほったらかしにされたために、
 最後のハッピーエンドが受け入れられませんでしたし。

 ただ、のりっぺさんが言うように全てが駄目な作品でも
 ないことは確かだと思います。

 自分が描きたいテーマをしっかり持っている方だけに
 次回作で化けることを期待したいですね。

投稿: トミー | 2006年8月19日 (土) 23時32分

こんばんは!ECHO&コメ、ありがとうございました!
父親殺し、この事実がうやむやになっているのが、
なんと言っても最悪です。
テルーの唄、あのシーンは、口パクで手一杯だったんじゃないですか?
またよろしくお願いしますね。

投稿: 猫姫少佐現品限り | 2006年8月21日 (月) 23時22分

猫姫少佐現品限りさん。
コメント返しありがとうございます。

父親殺しは一番うやむやにしては
いけない所ですよね。
ほんと釈然としませんでした。

投稿: トミー | 2006年8月24日 (木) 23時28分

トミーさん、こんにちは。
コメント&TBありがとうございます。
そうなんですよね、若いな・・・って感じがします。
一生懸命に伝えたいということはわかるのですが、全部台詞で言われても観ている方は辛くなってしまいますよね。

投稿: はらやん | 2006年10月21日 (土) 16時07分

はらやんさん、
コメント返しありがとうございます。

ほんと、宮崎吾郎さんにはもっと
経験を積んでもらいたいですね。
現在、かなり今更な感じのある
「テルーの歌」盗作騒動なんかも
持ち上がっていますが、くじけず
より自分の言葉で表現できる映画を
作れるように頑張ってもらいたいものです。

投稿: トミー | 2006年10月21日 (土) 16時24分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/102895/3096658

この記事へのトラックバック一覧です: 映像作品である意義は? 「ゲド戦記」:

» ゲド戦記 [映画/DVD/感想レビュー 色即是空日記+α]
今回のゲド戦記は・・・う~ん、、 小さい子供向けの作品ではないです。 世間の評価もかなり厳しいと予想できます。 でも荒削りだけどイイものも感じました。 [続きを読む]

受信: 2006年8月18日 (金) 00時02分

» ゲド戦記 06年165本目 [猫姫じゃ]
ゲド戦記 2006年   宮崎吾朗 監督   アーシュラ・K・ル=グウィン 原作岡田准一 、手嶌葵 、田中裕子 、菅原文太 、風吹ジュン 原作ものですよね。人間と魔法使いと竜が存在するんですよね。 息子さんが、初めて監督したんですよね。 てか、やっぱり、お子様...... [続きを読む]

受信: 2006年8月20日 (日) 17時45分

» 「ゲド戦記」を観た感想 [【 X-CAFE 】]
巨匠・宮崎駿監督を父に持つ宮崎吾朗監督の第一回作品。 宮崎駿監督作品のような極上な映画体験には及ばず、 表現の固さと引きこもった心によって、青くて甘くないバナナのような作品でした。 そりゃね、初監督作品ですから、表現の"固さ"は当然あるだろうし、いきなり極上の映画体験ができちゃったら、実はお父さんが監督した?って思われちゃうだろうし。 ジブリの将来を担う若き才能の誕生を楽しみにはしていたんだけど、しがらみが大きすぎたんだろうなー。美しい画面から、外に向かうパッションやエモーショナルな部分... [続きを読む]

受信: 2006年8月23日 (水) 16時43分

» ゲド戦記 [ちわわぱらだいす]
試写会があたったので瑠璃さんと見に行ってきました。。。 感想ですか・・・・ ねむたかったぁ~って言ったら「寝てたじゃん」って。。。 はい、寝てました(- −;) ストーリーがスローテンポ。どんでん返しもないサプライズもない。 途中寝ててもしっかりお話はわかり..... [続きを読む]

受信: 2006年8月25日 (金) 01時42分

» 命を大切にしないやつなんて大嫌いだ! [キャバ嬢このはの気まぐれ日記]
「 ゲド戦記  」見たよ~ ♪.......心を何にたとえよう 鷹のようなこの心       心を何にたとえよう 空を舞うような悲しさを....♪ あんま期待せずに見に行ったら、 いや~思ったより 面白かったよ。 ? ネットで批判ばかりだけど、 確かに お父... [続きを読む]

受信: 2006年8月27日 (日) 02時31分

» 「ゲド戦記」 熟成度が足りないワインのような・・・ [はらやんの映画徒然草]
「ゲド戦記」観てきました。巷では評判あまりよろしくなかったので、やや期待度低かっ [続きを読む]

受信: 2006年10月21日 (土) 13時30分

« 戦争を語りつぐ意義 「男たちの大和/YAMATO」 | トップページ | 名探偵v.s.名犯人 「容疑者Xの献身」 »